〜オーレ地方ニケルダーク島〜

少年がその部屋の大きな机の前に座っている。少年が口を開いた。

「……で、オキタ。ディアルガとパルキアの捕獲計画は進んでいるのか?」
「はい、パルキアに関してはポケモンハンターに、ディアルガはギラティナに追跡させています」

少年はいぶかしげな顔をする。

「ポケモンに任せておいて大丈夫なのか?」


「ええ、ギラティナがディアルガと交戦を始めたら1分以内に私に連絡が入るようになっているので、大丈夫です」
「そうか。2体の捕獲は最優先課題だからな。失敗は許さねぇ」

少年はパソコン画面に向かい、通信を始める。

「ワルダック、6港町同時攻撃の準備は調っているか?」
『はい、カイナ、ミナモはジムが存在しないため準幹部級の部隊を、クチバにはアオギリ、ミオにはマツブサ、キッサキはアカギが担当する予定です』

パソコン画面の中の人がこたえた。

「……? アサギはどうした?」
『アサギは私が直接。襲撃予定日にポケモンコンテストが開催されるそうなので、攻略が最も難しいだろうと予測されます』
「ふん、高々ポケモンコーディネーターに何が出来る? その程度で恐れているようなら貴様もまだまだだな」

ワルダックとオキタは苦笑いをする。

『実は今回のコンテストにファイターであるハルカ、シュウ、ハーリーの三名が参加予定なのです。奴らからの妨害の中で作戦を遂行し、三名を捕らえるのはなかなか難しいかと』
「確かにファイター捕獲も重要課題だ。ミスるんじゃねえぞ!」
『はい!!』

 

 

 

 

 

〜ジョウト地方のとある町〜

「は、はい!? ちょっ、叔母さん! 今の俺の現在地……ってちょっと待…………」

ルリの持つ受話器には、ツー、ツー、ツーという虚しい音が響いていた。

メフィス達はまたかといわんばかりの表情。

「…………(頭痛」

紹介しよう。
彼の名前はルリ。ルイナの両親をトップとする組織の一員であり、ポケモンレンジャーとしての免許も持っているポケモントレーナー兼フリー警官と言ったところか。因みにルイナの従兄弟だ。

……話を戻そう。何時ものごとく急用を押し付けられたルリは、ザディエルに乗ってカイナシティに到着。

「ルリ特殊兵長! 遠方よりご苦労様です。こちらが今回の内容です」

ルリは資料を渡され、船に乗り込み、割り当てられた部屋で荷物を降ろすと、何時もの如くすぐに資料を読み始めた。

「ニー、今回はどんな仕事かな」
「まあ、ルリの反応見れば大体分かるから」

……10秒経過
…………20秒経過
………………30秒経過


1分たっぷりルリは黙ったままだ。

「……メフィスさん、エイプリルさん、このパターンって」
「うん、相当切迫した仕事らしいね」

ルリは苦笑いしつつ顔を上げる。

「……全く、叔母さんも何考えてるんだか……」
「どんな仕事だったんですか? ルリ」
「ある人の護衛をしろっていう仕事なんだが……」
「ルリ特殊兵長、間もなくクチバに到着致します!」

ルリの言葉を遮るかのように、船員さんがそう告げる。

「分かった。……まあ、とりあえず本人と会えばわかるはずだ」

船はすぐにクチバに着き、ルリ達は船から下りた。

無論、ラシュハルとザディエルはモンスターボールの中だが。

「……お、来た来た」

クチバの市街の方からあるいてくる、キレイハナとヒトカゲを連れた人影……断っておくが、ギャグではない、絶対にギャグじゃない!!

……話がズレた。とにかくその人影は次第にルリに近づいて来る。

「よう、久しぶりだな、お嬢!」

はっきり顔が見えるぐらいの距離になってからそう言った。

「ルゥ兄!? どうしてここに? ……というかいい加減『お嬢』はやめて欲しいなぁ」
「ははは、悪ぃ、悪ぃ。……ていうか叔母さんから聞いてないのか? 俺がここに来てる理由」
「うん、『コレ』をホロンの研究島跡に届けてくれって頼まれただけで何も聞いてないよ」

ルイナはポケットからメモリーカードを取り出した。

「『ホロンの研究島』? なんだってまたあんなとこに……」
「そもそもあたしはホロンの研究島ってどこかってことすら聞いてないよ」

ルイナはカードをポケットに戻す。

「ホロンの研究島ってのは、昔ロケット団がδ種、タイプ違いのポケモンを作る研究をしていた場所で、今は機能停止している。ポケモン協会が施設を改装して非常時用の協会本部非難所にしたって話は聞いてるな」

今もδ種は一部のトレーナーの間で使われている。
その例の多くは、「いかりのみずうみ」のギャラドス達をδ種へと改造したギャラドスδらしい。

「……ということはポケモン協会に渡すべきものなのかな? それで、ルゥ兄はどうしてここに?」
「いや、叔母さんからお嬢の護衛を頼まれてな」

はて、とルイナは思った。
ルリを護衛に付けるならそもそもルリにメモリーカードを渡せば済んだはずだ。
それをわざわざ私にルイナに渡すメリットが無い。

ルリも同じ様に思ったらしく、首を傾げている。

「まあ、向こうにつけばわかるだろ。とりあえず船を出してもらおう」

ルリが船に向かおうとしたとき、船から青ざめた顔の船員が走ってきた。

「ルリ特殊兵長! ただいまクチバ港沖に伝説のポケモン、カイオーガが出現したとの報告が!!」
「カイオーガ? 何かの冗談だろ!」

そう言ったとたん、辺りに雨が降り出す。

「……冗談じゃないみたいだな。メフィス、行くぞ! お嬢、協力してくれ!」
「だからお嬢じゃないってば……」

 

 

 

 

 

〜ファイトエリア バトルフロンティア〜

バトルフロンティアのランドマークのように高くそびえるバトルタワー。

ホウエンに、「そらのはしら」という場所があるが、それに負けず劣らずの存在感をそのタワーは持っていた。

「さあ、今日もバトルタワーの連勝記録を延ばすぞ!!」

意気揚々とバトルタワーに入ろうとしているこの少年、コウキ。
ナナカマド博士から図鑑を貰い、シンオウのジムを制覇、チャンピオンのシロナを破った凄腕のポケモントレーナーである。

が、彼がバトルタワーに入ろうとしたとき、何だか無駄にメッセージウィンドウの幅をとっている気がする「ドン!!」という安っぽい効果音と共に毎度お馴染みの事故が起こったのであった。

「なんだってんだよ〜! ってコウキか!!」
「……あのさぁ、いい加減に人に追突するのやめてくれない?」

コウキに追突してきたこの少年。
コウキの幼なじみであり、ライバルのジュン。
言うまでもなく行動的で明るい。
……単にせっかちなだけとも言える。

「お、そうだ! せっかくだから、二人でタッグバトルってのはどうだ?」
「うーん、まあ悪くないかな」

コウキは少し迷った後、そう答えた。

いや、拒否権が無いから諦めただけだorz byコウキ

「そうと決まればさっそくダブルバトルルームだ! 先に行ってるから、遅れたら罰金100万円だからな!」

やれやれ……といわんばかりの疲れた顔でコウキが頷くと、ジュンは物凄い速さでバトルタワーの中に入って行った。

「テッカニンとスピード勝負出来るかもな……あいつ」

コウキがそう呟いたのを責める人は無論いなかった。

コウキは疲れた表情でバトルタワーに入り、エントリーするポケモンをボックスから引き出す為に、置いてあるパソコンを操作する。

「ん〜と……エレキブルとブーバーンを預けてエアームドとグライオン……を引き取るっと!!」

コウキは画面を操作し、必要項目を埋めていく。

「これでよしっと!」

コウキがエンターボタンを押すと、耳障りなエラー音と共に「システムエラー」と画面に表示された。

(システムエラー? 何があったんだろ?)

とコウキが思った瞬間、又例の効果音と共に、ジュンが追突してくる。

「なんだってんだよ〜!」
「……お前絶対俺を殺す気だろ……」

コウキはパソコン画面に倒れ込んだままそう言う。
……彼を責めないであげてほしい。こんな調子じゃ、胃に穴が開くのも時間の問題だ。

「コウキ! 俺もパソコン使うから……」
「あ〜あいにくだかそりゃあ無理だ」
「……?」

どうして?
と首を傾げるジュン。

「なんだか知らないが、ボックスシステムがダウンしてる。預けることも引き出すこともできないんだ」

コウキはパソコンをテレビ電話に切り替え、ナナカマド博士と繋ぐ。

「ナナカマド博士、ポケモン預かりシステムがダウンしてるみたいなんですけど、なにかあったんですか?」
『いや、今のところ原因は不明だ。ところで今二人はどこにいるんだ?』
「ファイトエリアのバトルタワーですけど……」
『調度良い。今から船でキッサキシティまで来てくれんか?』
「わかったぜ、じーさん! ほら、さっさと行くぞコウキ!!」

ジュンはパソコンの電源を切ると、コウキをずるずると引っ張って船着き場の方へと走って行った。

 

 

 

 

 

〜トリプル・ビートが行われている公園〜

「さあ、ハレタ選手の3連勝を賭けた試合、ハレタ選手VSサトシ選手、大変な接戦になって参りました!!」

バトルフィールドを挟んで対峙するサトシとハレタ。

サトシは長年のパートナーのピカチュウ、ハレタはゲンから貰ったタマゴからかえったリオルがスズナ戦で進化したルカリオを使っている。
2匹とも二人の主力であるポケモンだけに息もピッタリで、なかなか決着がつかない。

「ルカリオ、インファイトだ!!」
「ピカチュウ、回って交わせ!」

ピカチュウはお得意の回転で加速しつつインファイトを交わす。

「おめー、すげーな! だけどオイラたちだって! ルカリオ、はどうだん!!」
「それならこっちは……ピカチュウ、ボルテッカー!!」
「ピカチュウのボルテッカーとルカリオのはどうだんが激突っう!! 勝負の行方は?」

技がぶつかりあい、煙がたち、中から光が漏れる。

衝撃波であたりのもの全てが吹き飛ばされるかと思うほど強い衝撃があたりを襲った。

やがて煙が引いて、バトルフィールドの様子が見えるようになったとき、そこにあった光景に、観客だれもが息を呑んだ。

「これは一体どういうことでしょう? サトシ選手もハレタ選手も、ルカリオもピカチュウもバトルフィールドから消えてしまいました!!」

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