…グゥルルルル!!
…グワァァルル!!

巨大な力が弾け、辺りの空間が吹き飛ぶ。
何か大きな青いものと赤いもの戦い…

その戦いは静まる事なく、静かな空間を揺るがす。
やがて、赤い方は青い方の攻撃を喰らい、別の場所へと身を隠した。

出会うはずの無いもの同士が、時空の狭間で出会う。
それが、物語の始まりだった…

 

 

 

【第1話 時空を越えた少年】

 

 

 

「う…うーん…」
「あら、目が覚めた?良かったわ。」

僕はゆっくりと目を開く。
おかしい。自分の部屋の布団の上で寝ていたはずなのに。なんでベットの上で寝ているんだろう。

僕はツバサ。ポケモンアニメ大好きってこと以外は、どこにでもいそうな13歳の少年だと思う。
昨日もポケモンアニメ見て、パソコンいじって、自分の部屋で寝たはずなんだけど…

僕は、ゆっくりと体を起こす。
うう、体中あちこちが痛い…

「………!?」

一瞬自分の目を疑った。
目の前にジョーイさんがいるのだ。
いや、普通の女医なら別に驚かないが、ポケモンアニメに出てくる、何処の町に行っても顔がほとんど同じという、あのジョーイさんである。

「え?な?ここは…どこ?」
「ここはアラモスタウンのポケモンセンターよ。」

…いや、嘘だろ。
うん、絶対にテレビ番組とかのドッキリ企画か何かだ!!

「えーっと、どうかしたのかしら?」
「え、いや…別に…」
「そう、ならいいんだけど。あ、これ貴方の落とし物よ。」

そう言って差し出されたのは2個のモンスターボール。
…いや、ここまで手の込んだ悪戯って…………

「じゃあ、私はポケモン達の診療がありますから、ゆっくりしていって下さい。」

僕はゆっくりと深呼吸をする。
…もし、ジョーイさんの話が本当なら、僕はポケモン…おそらくポケモンアニメの世界に来てしまったことになる。
でも、そんな馬鹿げたことが有り得るだろうか?
どちらにせよ、この渡されたモンスターボールを開けてみればわかる。
僕は、片方モンスターボールの開閉スイッチを押す。
モンスターボールが光り…
中から現れたのは、紛れもなく、ポケモン…しかも、幻のポケモン、ジラーチだ った。

「嘘だぁぁぁぁぁぁぁ!!」

僕の絶叫はポケモンセンター中に響き渡ったのであった。

「…やっぱり、ポケモンの世界に来ちゃったってことか。」
「……ねえ、もしかして、君、ツバサ?」

僕が混乱していたから、完全に無視された状態になっていたジラーチが、始めて 口を開く。

「そうだけど…何で?」
「やっぱり、マスターか。」

…ああ、僕ねポケモンゲームでのパートナーのジラーチか。 …もうここまで来たら何が来たって驚かないさ。

「うん。覚えてるよ。」
「良かった。で、何でそんなに混乱してるの?」
「いや、元々僕が住んでた世界と違う世界に来ちゃったらしい。どうやらこの世 界は僕の世界で放送されてるポケモンアニメの世界らしいんだよ。」
「…つまり、ツバサは全く別の世界からこの世界に来ってこと?」

まあ、多分そうなんだろうけど。
ただ、分からないことが多すぎる。

「うん、まあ、多分そうだと思う。…ジラーチは何か知らない?」
「私、何にも覚えてないの。…ツバサがマスターだってこと以外は…」
「……何の手掛かりも無し、か。」

僕はそういって、ベットから降りる。

「ま、しょうがないよ。来ちゃったからにはしょうがないんだし、幸い、ポケモ ンアニメは好きで詳しいからね。」

僕はそう言って、受け取ったモンスターボールのもう片方を投げる。

「エフィ!!」

中から出て来たのはエーフィ。恐らく僕がポケモンゲームで「アナベル」という 愛称を付けていたエーフィだろう。

「やっぱり、アナベルも何にも覚えてないのかな?ちょっと聞いてみてよ、ジラ ーチ。」
「オッケー。」

ジラーチはアナベルに事情を説明し、何か覚えてないか聞いた。
…が、やはり帰って来た答えは同じ。
「僕が親だということ以外、何も覚えていない」、と…

「で、これからどうするの?」
「うーん、まあ、『僕は違う世界から来ました!!』なんて言いふらしたら、精神病院連れていかれるのがオチだから、それは隠しながら、少しこの世界を旅してみようと思うんだ。何かわかるかも知れないしね。さ、行こ、サーシャ、アナベル?」
「サーシャ?」

聞き慣れない名前に、ジラーチが首を傾げる。

「貴女のニックネーム。アナベルにはちゃんと付けてたんだけど、貴女には訳合ってニックネームを付けらずにいたからさ。」
「…うん!ありがとう!」

僕はジョーイさんに御礼を言うと、ポケモンセンターを後にした。

 

 

 

「アラモスタウン、まさか映画の舞台になったこの町に来れるなんて思ってなかったな…」
「あら、気が付いたのね、良かった。」

ふと後ろから声をかけられる。
そこにいたのは、映画に出て来たアリスさん。

「ア、アリスさん!!」
「え、どうしてあたしの名前を…?」
「あ、いやいや、アハハハ……ってあれ、どうしてアリスさんが僕のことを?」
「貴方が倒れてるのを見つけて、ポケモンセンターに運んだのは私だからよ。」

アリスさんはそう言って、にこっと笑う。

「そうだったんですか…ありがとうございます!!あ、僕、ツバサって言います 。」
「あたしはアリス。普段は音楽の勉強をしてるんだけど、たまに気球で街のガイ ドをしているの。…そうだ、折角だから街を案内しようかしら?」
「いいんですか?お願いします!!」

と言う訳で、僕はアリスさんにアラモスタウンをガイドしてもらうことに。

 

 

 

「此処が時空の塔。」
「右側が時間、左側が空間を象徴しているんですよね、確か。」
「詳しいのね。」

そりゃそうだ。だって、これ、映画の中ではかなりキーになる建物だし。
僕は、アリスさんについて時空の塔の奥へと進んでいく。

「此処は数ヶ月に一回開かれるポケモンコンテストアラモス大会の会場よ。明後 日にも大会が開かれるの。」
「ポケモンコンテストか…」

実は、僕、ポケモンコンテストが大好きだったりするんだよね。
折角こっちの世界に来たんだから、挑戦してみたいな…ま、流石に明後日は無理 だけど…

…その後、一通りアリスさんに街を案内してもらい、大分辺りも夕焼け色に染ま って来た。

「アリスさん、今日はありがとうございました。」
「ええ。どういたしまして。ツバサ君はこれからどうするの?」
「とりあえず、明後日のポケモンコンテストを見学して、それでこの街を出ようかなと… 」
「そうなんだ。」
「じゃあ、今日は本当にありがとうございました。」

僕はアリスさんに一礼して、ポケモンセンターに戻る。
ジョーイさんに頼んで、トレーナー用の個室を借り、そこでゆっくり休むことに した。

「ふう…出て来て、サーシャ、アナベル!!」
「ジラ!!」
「エフィ♪」

僕はベットに腰掛け、テレビの電源を入れる。

「…続いて、先週行われましたグランドフェスティバルセキエイ大会の模様をお 伝えします。」

…グランドフェスティバルセキエイ大会?
それって、確か…ハルカが参加したあの大会じゃ…

やっぱり。 案の定優勝者のサオリさんが映し出され、一瞬だがサオリさんとバトルしている ハルカも映った。

「…サーシャ、アナベル。次の目的地はマサゴタウンに決めたよ。」
「「マサゴタウン?」」
「うん。ポケモンアニメの主人公、サトシは今、バトルフロンティアってとこの 最後の施設、バトルピラミッドにいるくらいだと思う。彼は、バトルフロンティ アを制覇した後、このシンオウ地方のマサゴタウンに来る。」
「ちょっと待ってよ、なんでそのサトシさんて人に会いに行くの?」
「…なんとなく。特に理由は無いんだけどさ。彼と知り合っとけば何か分かるか もしれないからさ。」

勿論、ただ単に会ってみたいという気持ちもあるけど…

「そっか。いいよねアナベル?」
「エフィ。」
「いいってさ。」
「うん。それじゃあ、明日は旅の準備をして、明後日はポケモンコンテスト見て 、明々後日に出発しようか。」

翌日は大忙しだった。
一口に旅の準備と言っても、野宿用のキャンプ用品を揃え、食料品や薬類を買う 。
ついでに、ポケッチも手に入れた。
シンオウ地方は寒いところだから、服も新しくして…と大忙しである。

逆にその翌日はとても楽しかった。
初めて生で見るポケモンコンテストは新鮮で、とても面白かった。
やっぱり、コンテストって、いいもんだよな〜と。

優勝したのは、グレイシアを連れたコーディネーターだった。

そして、旅立ちの朝はあっと言う間にやってきた。

「よし、準備は万端!!サーシャ、アナベル、頑張っていくよ!!」
「ジラ♪」
「フィー!!」

 

 

 

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