僕は今、コトブキシティを目指して旅をしている。
その途中、そう、クロガネゲートを抜けた辺りである。
え?クロガネシティには寄らなかったかって?
サイクリングロード使ったからな…パスしちゃったんだよね。ははは…

「フィ!?」
「ん?どうしたのアナベル?」

見るとアナベルの額の玉が光っている。
エーフィの種族は確か、サイコパワーを使うとき、額の玉が輝くんだよね。

「エフィ、エ…エフィフィッ!!」 「何か感じ取ったんだね。」

アナベルはこくんと頷き、ある方向目掛けて走り出した。

 

 

 

 

 

【第2話 礼儀正しい居合の名手】

 

 

 

「こ、これは…!」

アナベルが案内したところは、コトブキシティに行く道からかなり離れた所。
しかも、崖崩れを起こしている。

「フィ!フィフィ!!」
「あ!!」

アナベルの促す方を見ると、そこにはポケモン…エルレイドが倒れていた。

「き、君…大丈夫?」

僕は慌ててエルレイドに駆け寄る。
…が。

「エルレイッ!!」

サイコカッターで吹き飛ばされてしまった。

「イタタタ……ッ……。あ、アナベル、いいんだ。不用意に近づいた僕が悪かったんだから。」

僕は戦闘体制に入っているアナベルを制する。
こういう時は!!

「出て来て、サーシャ!!」
「ジラ♪」
「あのエルレイド、怪我してるから、手当てしたいんだよ。でも、警戒してる見たいだから、話して来てくれないかな?アナベルもお願い!!」
「了解!」
「フィ!」

アナベルとサーシャはゆっくりエルレイドに近づいて行く。

「エーフィ、エフィ、エフィ!!」
「ラチ、ジラー、ラチ。」
「レイ、エルレイ。」
「…もう来ても大丈夫だよ〜ツバサ。」

以外と簡単に説得出来たみたいね。
僕はエルレイドに駆け寄り、バックから傷薬を取り出して、「少し染みるかもしれないけど、我慢してね」と言って、傷にスプレーする。

「これで良しっと。まあ、応急処置だから、しっかりポケモンセンターで診てもらわないとダメだけどね。えっと…此処から一番近いポケモンセンターは…っと。」

僕はバックから地図を取り出す。

「うん、次の町のポケモンセンターだ。」
「でもツバサ、どうやってエルレイドを運ぶの?」
「うーんと…多少歩けるようなら僕の肩に捕まって歩いて貰うしか無いよね…」
「エル…」

エルレイドは僕のベルトに付けてある空のモンスターボールを黙って見つめる。 そして…

カチッ。

エルレイドはモンスターボールの開閉スイッチを押し、中に吸い込まれた。

モンスターボールは地面に落ち、数回揺れて止まる。

「…………………………………」
「…………………………………」
「……………………えっと……エルレイドゲットってことで良いのかな?」
「さあ…?」

サーシャが呆れた様に答える。

「まあ、取りあえず、ポケモンセンターに行こっか?」

まずエルレイドの治療をしなきゃいけない。
そっちの方があらゆる突っ込みより先だということは確かだ。
僕はサーシャをモンスターボールにしまい、ポケモンセンターへ急いだ。

「お待たせしました、お預かりしたポケモンは、みんな元気になりましたよ。」
「どうもでーす。」

僕はついでに預けたサーシャ達とエルレイドのモンスターボールを受け取ると、個室に戻る。

「出て来て、サーシャ、エルレイド!!」

僕はモンスターボールからサーシャとエルレイドを出す。

「でさ、エルレイド。君は何であそこで倒れてたの?」
「レイ…エルレイ…。」

サーシャに通訳してもらった話によると…
話のきっかけは5日前、つまり僕がこの世界に来た時に遡る。

一人気ままに生活していた彼は、その日も、お気に入りの場所でのんびりと昼食を取っていたらしい。

が…急に、突風…いや、どちらかというと衝撃波に近い物が辺りを走った。
と同時に彼のいた場所の足場が崩れ、そのまま崖崩れに巻き込まれてしまったらしい。

ある意味、生きていたのは奇跡に近い。

事実、足を怪我していたため、動けなく、数日間ほとんど飲まず食わずの状態だったらしい。

…との話だった。

「…そっか。そこに僕らが通り掛かった訳か…」

運が良かったというか。
最悪、僕らが気付かずに、通りすぎていれば、最悪の事態だって考えられただろう。

にしても、エルレイドの言ってる衝撃波って何だろう…僕がこの世界に来た日と同じ日だっていうし…何か関連性がありそうな気がしてならない。
……うーん…………考えすぎだろうか。

「うん、じゃあ、元居た場所まで送ってくよ。」

そう言うと、エルレイドは首を横に振る。
…え…ってことは…

「このまま仲間になりたいんだって。どうするの?」
「…エルレイド、僕はこの世界の人間じゃないんだ。」
「……?」
「違う世界から何かの弾みでこの世界に来ちゃった人間なんだよ。そんな変なトレーナーの手持ちになるよりも、野生で暮らした方が幸せだと思うよ?」

…これは本当のことだ。
僕は、明日どうなるかも分からない。
いつになったら帰れるのか、いつまでこの世界にいられるのか…

「エルレイッ、レイ!!」
「構わない、だって。」

うーん、そこまで言われると、NOとは言えないよな…

「うーん、そこまで言うなら分かったよ。一緒に行こう。」
「レッ…!!エルレイ!!」
「でさ、僕もケジメ付けたいから、一回逃がしてからゲットしなおしたいんだよ。良いよね?」

エルレイドは首を縦に振る。
…まあ、初ゲットがアレじゃ、メンツが立たないからね(苦笑)

僕は、モンスターボールのボタンを押して、エルレイドを逃がす。

「じゃ、行くよ。」

僕は、エルレイドにモンスターボールを軽く当てる。
モンスターボールは数回揺れて止まる。正式にゲットした証だ。

「改めて…エルレイド、ゲットだぜ!!」

うーん、これ一回やってみたかったんだよな♪

「じゃあ、出て来て、エルレイド!!」

僕はエルレイドを再びモンスターボールから出す。

「うーん………そうだな……よし、決めた!!」
「………?」

エルレイドとサーシャは首を傾げる。

「エルレイド、君の名前を決めたよ。君はこれからイクシード。気に入ってくれるといいんだけど…」
「エルレイッ!!」

イクシードは嬉しそうに首を縦振る。
良かった。気に入って貰えて。

「よし、じゃあ、今日は遅いから、皆モンスターボールで休んでて。」

僕はそう言うと、サーシャとイクシードをモンスターボールに戻す。

 

 

 

 

 

僕は皆の分の夕食を注文するために、個室を出て、食堂へ行こうとしていた。
その途中、ポケモンコンテスト開催!!と書かれたポスターがロビーに張り出されていたのに気付く。

「開催は…1週間後か!!よーし!!」

せっかくこの世界に来たんだ。
ポケモンコンテストに挑戦しなくちゃ勿体ない!!

僕はそう思って出場することに決めた。

勿論この時は、この決定が、僕の尊敬するあの人との出会いに繋がる、なんて思いもしなかったけど……

「さあてと。食堂に行きますかっと!!」

 

 

 
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