「ふう、疲れたぁ〜」

僕はイクシードにお礼を言ってボールに戻すと、選手控室のソファーに倒れ込んだ。

【第4話 決戦!VSノゾミ!!】

『フィニッシュだ!!ポッタイシ、バブル光線!!』

モニターから聞こえた聞き覚えのある声。 僕はモニターの方を振り向く。

「あ、ケンゴだ…」

ケンゴ。彼はフタバタウン出身のヒカリの幼なじみであり、優秀なポケモンコー ディネーターである。

「へぇ〜彼もエントリーしてたんだ、この大会。」
「あ、ツバサ。お疲れ。」

ニャルマーのけづくろいをしていたノゾミがニャルマーを抱えて選手控室に戻っ てくる。

「うん。でも、ノゾミは流石だよな。なんつーか、演技慣れしてるよね。」
「アンタの演技も初挑戦にしては良かったと思うよ。」
「でもさ、登場の演出、張るボールカプセルは泡のやつよりも星のやつの方がい いかなって思うんだけど…」
「それより、『つじぎり』のスピードとタイミングが…」

(中略)

「今回の演技『みだれひっかき』に固まったのは反省だね。」
「いや、それはいいと思うんだ。ただ『でんげきは』があるなら…」

(さらに中略)

「イクシードの『さいみんじゅつ』は対象がいてこそ効果を発揮できる技だから …それを何とかして使えないかな」
「『かげぶんしん』とか使って何とかならない?」

(もういっちょ中略)

「うーん、それならさ…」
『……見事1次審査を突破し、2次審査に駒を進めたのは、こちらの皆様でござ います!!』

アナウンスが入り、中央のモニターに写真が表示される。 右上に僕の写真があった。その二つ隣にノゾミの写真。

「あ…通ってる…良かった。ていうか、いつの間にインターバルに入ってたんだ ろう?」
「さあ?」

僕とノゾミは顔を見合わせて苦笑いした。

「続きまして、ランダムシャッフルで2次審査の組み合わせを決定いたします。 2次審査、コンテストバトルの組み合わせは斯くの如く決定いたしました!!」

…僕は、8人の中で右から3人目の場所。ノゾミは一番左だから、順当に行けば セミファイナルであたる。 ケンゴは別の山。仮に当たるなら決勝だ。

「じゃあ、あたしは試合があるから。」

ノゾミはそれだけ言うと、選手控室を後にした。

「出て来て、アナベル。」

僕はアナベルをモンスターボールから出す。

「1回戦で勝てば、おそらくノゾミと当たるだろうから、ちゃんと見ておこうね 。」
「フィ。」

試合は、ノゾミがムウマを出し、相手方が相性の悪いアサナンを出したこともあ って、即行で勝負がついた。

流石ノゾミ。

僕の方は、相手方のガブリアスの「げきりん」に苦戦したものの、何とかバトル オフに持ち込んだ。 ガブリアスは無駄に能力が高くて困るんだよな…

ケンゴもフーディンで快勝。

そして、僕は再びフィールドに立つ。2回戦、セミファイナルの相手はノゾミ。
「さあ、セミファイナル第1試合を戦うのは、かなた、ノゾミさん!!こなた、ツ バサさん!!制限時間5分待った無し!!参ります!!」
「ムウマ、Ready,GO!!」
「アナベル、GO!!」

フィールド上でムウマとアナベルが対峙する。 相性で行けばこっちが不利だが、アナベルは「シャドーボール」を使える。…と は言えガブリアス戦で「シャドーボール」を使ったから、ノゾミはこのことを知 っている。 決して、不利とは言えない状況だ。

「先手必勝、アナベル、でんこうせっか!!」
「おっと、これはどういうことでしょうか?ツバサさんとエーフィ、ゴーストタ イプに効果の無い『でんこうせっか』で先手をとりました!!」

勿論、狙いは技のヒットじゃない!!

「ムウマ、でんげきは!!」

そう来たか。
僕が狙ったのは、ムウマに近づいて、ゼロ距離…とまでは行かないが、至近距離 で「シャドーボール」を命中させること。接近戦でなければ、こちらが不利であ ることは間違いない。 しかも、「でんこうせっか」のスピードがあるため、相手が攻撃して来ても交わ しやすい。 それに感づいたノゾミは、これ以上アナベルを近づけないため、命中しやすい技 、「でんげきは」を放って来た。 ………なら!!

「アナベル、あなをほるで交わして。」

「でんげきは」が命中する前に、アナベルは地中に潜って「でんげきは」を交わ す。ノゾミのポイントが若干ではあるが減った。

「アナベル、ムウマの背後をとってシャドーボール!!」

地中から、ムウマの背後に現れたアナベルはシャドーボールの発射体制に入る。 が、その時ノゾミが微かに笑ったのを僕は見逃さなかった。

「ムウマ、サイコウェーブ!!」

ムウマの周りに渦が巻き、発射されたシャドーボールと共にアナベルはサイコウ ェーブに巻き込まれ、大きく吹き飛ばされてしまった。 竜巻の中から優雅にムウマが現れる。「シャドーボール」が四散した光も、ムウ マのボディを引き立てているという僕からすれば最悪な状態になっていたりする 。

僕のポイントが大きく減る。

…流石はノゾミ。 恐らく、僕らがあなをほるを使うことも想定済みだったんだろう。

「アナベル、大丈夫?」
「フィ、エフィ…」

少しよろけながらも、アナベルは立ち上がる。

「ムウマ、シャドーボール!!」

シャドーボールがぐんぐん迫る。

「アナベル、サイコキネシス!!」

アナベルは「サイコキネシス」で、先ほど掘った穴の周りにたまった瓦礫(?)を 壁にして、「シャドーボール」から身を守る。

若干ノゾミのポイントが減った。

「ムウマ、でんげきはからサイコウェーブ!!」

放たれた「でんげきは」は「サイコウェーブ」に纏わり、電気のサイコウェーブ へと変貌する。

これがノゾミの切り札か…!!

「アナベル、あなをほるで交わして!!」

アナベルは地中に潜り、難を逃れる。

…そりゃあ、「あなをほる」を使えばバトル・オフは免れるはずだ。 ただ、そうなると、アナベルの魅力を見せる暇が無くなる。

何か打開策は無いか…

何とかあの竜巻の影響を受けないで「シャドーボール」を当てられる場所は… そうだ、うん、一つだけある!!

「アナベル、でんこうせっか!!」

アナベルは穴から出て来て、「でんこうせっか」を使ってスピードを上げる。

「そのままジャンプ!!ムウマの真上を取るんだ!!」
「……!!」

サイコウェーブが唯一カバー出来ない場所、それは真上のはず!!

一瞬竜巻で何かが光り、爆発が起きる。

「エーフィ!!」

アナベルは爆発の中から無事に出て来たが、ムウマは弾き飛ばされ、ダメージを かなり喰らう。 ノゾミ側のポイントもかなり減った!! これなら行ける!!

「…初出場にしてはすごい強さだね。でも、これで終わりだ!!ムウマ、シャドー ボール!!」
「アナベル交わ……え?」

見るとアナベルは混乱状態になっている。 そのままシャドーボールを喰らってしまい…

「エーフィ、バトルオフ!!セミファイナル第1試合を勝ち抜いたのはノゾミさん です!!」
「アナベルお疲れ様。…でもどうして混乱になったんだろ…」
「『あやしいひかり』を使ったんだ。」

ノゾミがムウマを頭の上に乗せ、こちらに向かってくる。

「『あやしいひかり』…?いつの間に使ってたの?」
「アンタのエーフィがサイコウェーブの真上からとびこんでシャドーボールを放 つ直前さ。」

そうか。爆発の前に一瞬だけ何か光ったのは…「あやしいひかり」だったのか。

「ふう、僕もやっぱり練習が足りないみたいだね。」

僕は苦笑いして、ノゾミと握手をした。

決勝戦、ノゾミVSケンゴのバトルは、相性の良さも手伝って、ノゾミの勝ちに 終わった。

そして、ノゾミは1つ目のリボンを手に入れたのだった。

そして大会が終わった後、僕とノゾミはコンテスト会場の前にいた。 ノゾミは次のコンテストが開かれるコトブキシティに向かうため、すぐにこの町 を去るとのことだ。

「じゃあね。また何処かのコンテストで。」

ノゾミはそう言って、僕に背を向けて歩き出す。

「あのさ…ノゾミ。」
「……?」

ノゾミは足を止めてこちらを振り返る。

「僕、コトブキのコンテスト、見学しようと思ってるんだ。だから…あの…一緒 にコトブキまで行かない?……コンテストのことでいろいろ教わりたいこともあ るし…」

ノゾミは少し呆気に取られていたようだが、すぐに復活して、言った。

「うん、いいよ。」
「……!ありがとう!じゃあ準備してくるね!!」

こうして、僕はノゾミと共にコトブキへ向かうことになったんだった。

 

 

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